4日目 評決が出る陪審裁判の4日目
3日目の裁判は、午前中は裁判官の都合で休廷。
午後から、被告人本人、その夫、その他に、animal controlの担当係が証言した模様。被告人本人が証言するかどうか疑問でしたが、弁護人は証言する可能性に言及していました。animal controlは郡の係で、野犬を捕まえたり、他の動物についての通報に対応するらしい。事件の現場近くで、その後も放浪する飼い犬についての苦情がたくさんあったと証言した模様です。
午後の公判は、私たちがアカオ判事に会って、その後でオークランドに行ったため、残念ながら傍聴できませんでした。
4日目、私たちは9時頃に裁判所に。2号法廷で、またarraignmentを見て、9時半頃から3号法廷で始まった陪審員選定を傍聴。こちらは、水曜日の午後から始まりました。その日は事件の説明をしただけで休廷。陪審員が18人前に呼ばれるところから、今日の手続が始まりました。
10時20分 私たちが傍聴し続けた事件の公判が再開され、そちらの移動。
まず廷吏が宣誓しました。陪審員の評議を担当することに関するものです。
すぐに裁判官による説示が始まりました。
たっぷりと時間をかけることに注目してください。
10時50分 検察側の最終論告が始まる。担当はこの裁判が初めてという検事。
11時15分 休廷
11時32分 再開 弁護側の最終弁論
12時07分 検察側の反論 担当は10数年の経歴があるベテランの女性検事。
12時24分 裁判官の説示
12時30分 陪審が評議に入る
それを見て、私たちは隣のビル地下のカフェテリアへ。
ところが、まもなく陪審員たちが同じカフェテリアに来て食事を始める。
どうやら、陪審長を選んで、評議の休憩に入った模様。
結局、陪審員たちは1時18分ごろに、評議室に戻った。
評決が出たのは5時ちょうど。時間を測ったように。
陪審が評議に入ったので、私たちは、となりの3号法廷の陪審選任を傍聴。
陪審が選ばれたのは、午後3時半頃。補欠が3人でした。
15分の休廷ののち、3号法廷では冒頭陳述。
犯罪は、再婚相手の11歳の連れ子に強制わいせつをして、強姦未遂という、7件の未成年への性虐待事件。重罪です。有罪になれば、たぶん10年か20年は最低でも刑務所に。
ただし、この子どもの証言しか、証拠はないようです。もっとも、この子どもから友人たちが話を聞いていたということで、3人が証言する予定。母親も、被告人の実の娘も証言するという。この実の娘も、被害者の娘から聞いて知っていたということです。
検察の切り札は、約10年まえに被告人がロサンゼルスに住んでいたとき、やはり再婚相手の連れ子(7〜8歳)に、同じように強制わいせつしていたことが分かったということ。
こちらの事件は、管轄がちがうので、サンタクルーズでは裁判にならない。
このロサンゼルスの証人は、別の人たち(里親)も性虐待で訴えているということで、どれだけ信用できるのか、というのが問題になりそう。
弁護側の反論は、これらの告訴はどれもウソで信用できないという、全面否定。
4時15分ころ、両者の冒頭陳述が終わって、休廷。明日の9時半に再開します。
この事件の検察官は、なかなかの能力。
陪審員選任でも、次から次へと変わる陪審員候補の名前をすべて覚えておいて、メモも見ないで、名前を呼びながら質問を続けました。
冒頭陳述もメモなしで、スムーズに進めました。
3号法廷が休廷に入ったので、法廷の外で待機。
そこに2号法廷の弁護人と被告人が来たので、タイミングを見計らって、インタビューの申し込み。弁護人は喜んで、質問に応じました。篠原さんがビデオで録画。
被告人は、判決が出るまでは、ということで、インタビューには応じませんでした。
5時に公判が再開。きっと、明日まで休廷するかと思っていたら、陪審長から評決書が裁判官へ。
裁判官が問題がないかどうかを確認して、自分で評決を公表。
第1の公訴事実 無罪 つまり、銃を見せて脅したというのは認められず。
第2の公訴事実 有罪 空気銃を見せて脅したということを認定
第3の公訴事実 無罪 言葉でおどしたということを認めず
第1と第2がどちらも有罪ということがない起訴の仕方については、日本の弁護士だったら、求釈明のケースではないかと、私は思いました。
これでは、検察側の起訴があいまいで、弁護が困難だということになるのかなあと、思いましたが、その問題は、少なくともこちらではない様子。
判決はあとで裁判官が言い渡します。
これは軽罪だから、郡のジェイル(jail)に最長でも1年の自由刑。
判決は数週間だろうということ。しかも、仕事をしている場合には、昼間は仕事に出かけ、夜だけ拘束されるという可能性があるということ。
初犯であるから、わが国であれば、執行猶予になるような事件でしょう。
結局、被告人のインタビューは、陪審員へのインタビューでできませんでした。
陪審員はとても協力的で、庁舎のそとで、集団でインタビューに応じてくれました。ずっといたのは、10人でしたが、陪審の経験について、とてもポジティブに答えました。当然ですね。
私は、3時間以上も評議したのだから、口論になるほど激論したのかと聞いたら、そんなこともなく、とても友好的に議論を続けたということ。
「12人の怒れる男」のようなことはなかった。ヘンリーフォンダもいなかったし、ということでした。
ということで、全部をビデオに撮りました。篠原さんが重い思いをしてカメラを持っていった甲斐がありました。
その後で、検察官2人にもインタビューしました。彼女たちも、私たちが陪審員と話すのをそばで聞いていました。最後にちょっと口を出して、裁判前に公訴事実2だけに有罪を認めることを求めたということを公表しました。被告人は拒否して裁判を求めたのだそうです。陪審員にとっては、ちょっと微妙な情報でしょう。
私は、こんな事件に陪審裁判をすることのついて、どんな意見かを聞きたかったのですが、理解できない様子。憲法に保障された権利ということでしょう。
検察官も弁護人も、自分たちが陪審員に話を聞くのは当たり前のこと。
それを禁止されるなど考えられません。
日本の裁判員法の守秘義務規定について、理解できませんでした。
それは日本の秘密主義で、官僚を守るためでしょうと解説すると、あきれたような表情をしました。
12人の陪審員と、補欠1人に質問紙を渡すことに成功。
今日の皆さんの態度から、回答が戻ってくる可能性が大きいように思いました。
以上が、とりあえずの報告です。ビデオがうまく撮れているといいですね。
(黒沢香)